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住職のお話

『からす』

本坊に入る門の屋根が桧皮葺きであった。伽藍をはじめあとの建物はすべて瓦葺きだから唯一の桧皮葺きは貴重な存在ではあった。
だがこれがある朝、みるも無残に傷を受けたのである。拳大の穴が2〜3ヶ所、周りにも梳いたような傷があっちこっちに。
桧皮の破片が下の地面にばらばらと散らかし放題。 そんな被害が何度か目にされたが、犯人はすぐには断じることができなかった。 カラスか、イタチか、テンか、あるいはもっと他の何者か?それと犯人の目的は何か?ということが見当がつきにくい。
加えて犯行を目撃することが容易ではなかった。しかしこのまま放置はできない、なんらかの対策は講じなければー そこで情報収集——似たような被害は近くでもあったー多田神社さん、ここは重文の建物ほとんどが桧皮葺きー事態ははるかに深刻なはず。そんなこんなで達した結論は犯人はカラス、犯行目的は賢いカラスのことだからよく解らないという。 ——「巣づくり材料説」「エサになる虫を取り出す説」「遊びごころのイタズラ説」といろいろだが、対策も決め手にかけるし、結局当山で選んだ道とはーー桧皮を諦めて銅板葺きに替えるというものだった。
本音をいえば最大の問題点は、桧皮葺きの修理復元費用が想定の範囲外の高額だったということである。 いまや、銅板の屋根は赤銅色からややさびた色に移り、カラスたちの恨みは買いつつも、夕日に映えて緑青色にかがやくのも遠くないと思われる日々である。 満願寺住職 若田等慧